アフリカ、マラウイで働く先生の給与はどれくらいなのでしょうか?
教育は国家にとって根幹となるもので、特に途上国の発展には重要な分野になります。
マラウイの重要な職業である、プライマリースクールとセカンダリースクールの先生の労働環境について紹介します。
私のマラウイ生活で得た個人的な経験と独自の調査ベースでお伝えします。
マラウイの教育システムについてはこちらの記事を読んでみてください。
アフリカ、マラウイで先生になるには?
マラウイ人がマラウイ国内で先生になるためにはどうしたら良いのでしょうか?
学校の先生になるには、校長(もしくはその上の管轄地区のマネージャー)が雇用を認めれば先生として働くことができます。
先生になるには特定の教育過程を修めなければならないのですが、その要件を満たしていない先生が多くいます。
しかし、先生が足りなかったり、特定の科目を教える先生がいないなどの理由から、資格がなくとも先生として教えている先生はかなりいます。
これが違法なのかどうかはよくわかりません…が、教育省から給与をもらっていることは間違いありません。
プライマリースクールの先生で約10%ほどが無資格、セカンダリースクールの先生で40%ほどが無資格だといわれています。
私の話の聞いた国内にいくつかしかない某国立セカンダリースクールでも、1名要件を満たしていない先生がいました。
以前よりは先生の数はかなり改善してきているようですが、いまだに先生不足が叫ばれてきています。
マラウイの全国平均になりますが、先生1人に対して生徒60人ほどの割合しかいないそうです。
ちなみに、世界平均だと先生1人に対して生徒24人です。
日本だと30人の生徒数に2人先生がついている学校もありますよね。
マラウイでプライマリースクールの先生になる資格を取る方法と、セカンダリースクールの先生になる資格を取る方法は違います。
プライマリースクールの先生になるには、教員養成校(Teacher Training College)へ2年間行かなければなりません。
そこまで難しいことではないようで、学校に通う授業料が払えて問題なく卒業できれば小学校の先生にはなれるそうです。
セカンダリースクールの先生になるには、教員養成大学(ドマシ教育養成大学・ナリクレ教員養成大学)か、4年制大学の教育学部(Chancellor College、Politechnic University、Mzuzu University)を卒業しなければなりません。
大学を出なければならないので、プライマリーの先生になるよりかなりハードルは高くなります。
しかしその分給与は良いですし、セカンダリーの先生になるためにプライマリーの先生をしながら勉強している先生もいます。
他のマラウイの先生事情として、ジェンダー格差が他の分野よりも少ないことが挙げられます。
マラウイ国内の先生のうちの4割ほどが女性で、校長・教頭、その上の管理職を含めても、マラウイでは珍しく女性が多く活躍している分野になります。
ちなみに、都市部と農村部では先生の男女比が若干違いがあるそうです。
都市部では女性が5割以上いる学校が多く、農村部の学校になると男性が多く傾向があるようです。
理由としては、特に独身女性が農村部で働くことを嫌っていることが挙げられるとのことでした。
たしかに私が調べた都市部のセカンダリー2校は、女性教員が半分以上いました。
それでは、気になる先生の給与はどれくらいなのでしょうか?
アフリカ、マラウイの先生の給与は?
マラウイの小学校は1994年に無償化が行われました。
その後、教育分野は少々崩壊し、先生の待遇が一時期悪化していましたが、年々改善はしてきています。
マラウイの先生は日本と同じく基本的に公務員になります。
もちろん私立の学校であれば公務員ではなくなるのですが、ちょっと特殊な形態の学校もあります。
教会系の学校や私立の学校でも、民営だけれども先生は国から出してもらう形の学校があります。
校舎のメンテナンス、備品購入、運営は民間でやるけど、先生だけは国から派遣して給与も国から支払ってもらうという感じです。
いずれにせよ、先生の大部分は公務員となるのですが、マラウイ国内の公務員の7割が先生です。
そして、マラウイ国家予算の20%ほどが教育予算となるのですが、その内の半分が先生の給与に使われています。
先生の給与が予算に与える影響は大きいです。
このことから前政権時代には先生の給与未払いが時折発生していました。
今でも毎月給与がちゃんと支払われるか、先生たちはしっかり確認しています。
また、教育省は給与の不正受給を防ぐために、定期的にIDの提出を先生に求めています。
これは以前に幽霊教師となっていたアカウントに給与支払いを続けていたことが発覚したため、行っているそうです。
さて、本題の給与額です。
基本情報として、マラウイでの一般的な給与事情をお知らせしておきます。
マラウイの月額最低賃金は、2021年1月時点でMK50,000(約6,780円)と設定されており、一般的な公務員の最低給与はMK115,000(約15,600円)ほどとなっています。
ちなみに、これは法で決められた最低賃金ではありますが、守っていない雇用主は多くいます…。
私の職場の警備員はこの最低賃金ベースで給与をもらっているそうです。
プライマリースクールの先生の給与は、この公務員の最低レンジの給与に設定されているようです。
月給で約MK100,000~150,000(約13,500円~20,340円)ほどになります。
最低賃金の2倍となる給与にはなりますが、実際にはそれほど良い給料ではありません。
私の知ってる都市部のタクシードライバーは、先生よりも少ない労働時間で、月額MK100,000以上は余裕で稼いでいます。
セカンダリースクールの先生の給与はだいたいMK150,000~250,000(約20,340円~27,000円)ほどです。
このレンジの給与までいくと、中所得者の仲間入りできる可能性があります。
セカンダリーの先生にはランクがあり、ランクが上がっていくと給与が上がったり役職(校長・教頭など)がついたりする仕組みになっています。
Jからスタートして、Gまで下がってそこからP8になって、数字が下がっていくというちょっと不思議なランクになっています。
J→I→H→G→P8→P7→P6→P5→P4
P7あたりから教頭や校長になれるそうです。
校長になるランクくらいからMK200,000にいくかいかないかくらいの給与になるので、先生の多くはJ~Gのランクにいることが推測されます。
教員のような公務員だと、給与以外の収入として、「手当」(Allowance)が多少もらえます。
会議や勉強会に参加したりるすと、一回数千クワチャがもらえます。
また、オープンデイスクール(定時制校のようなもの)で放課後に教えている先生は、別途教えているコマごとに給与がもらえたりもします。
あと、給与ではありませんが、教員住宅のある学校に配属されると、空いていれば安く家を借りることができます。
これはかなり先生にとってありがたいらしく、間接的に家計を支えています。
このような十分とは言えない給与状況の中、先生たちは収入を上げるために日々努力をしています。
アフリカ、マラウイの先生たちの収入を増やす方法
給与の部分で紹介したように、マラウイの先生の給与は公務員として良いと言えるほどものではなく、特にプライマリースクールの先生については少ないというのが現状です。
教師としての副収入(手当)も多少ありますが、家族を養うのにはもっとお金が必要になるので、多くの先生が副業を行っています。
例えば小売りです。
学校には生徒や先生など人が集まるので、そこでビジネスをすることができます。
どこの学校に行っても、敷地内に食事やおやつを販売している人がいるので、そこで先生がおやつを売ったり売店を運営していたりします。
ちなみに、先生が学校内で商売をすることは教育省から禁止されていますが、どの学校でも当たり前のように行われています。
都市部の先生だと輸入販売をしている人がいたり、農村部にいくと家畜を売ったりしている人も多くいます。
先生によっては稼働時間が半日程度になるような人は結構いるので、副業はやりやすいと思います。
副業以外で給与を増やす方法としては、昇進を目指すことができます。
プライマリースクールの先生であれば、教頭・校長、そして小学区内の学校を管理する管理職となるPEA(Primary Education Advisor)、大学区の管理を行うDEM(Division Education Manager)と上位の管理職に昇進できます。
セカンダリーも同じく、教頭・校長、EDM(Education Division Manager)と管理職として昇進ができます。
しかし、プライマリーもセカンダリーも、校長以降の昇進はポジションの人数も限られているので、かなり難しい道のりです。
他の方法としては、公立校から私立校の先生になるという方法もあります。
給与は学校にもよりますが、基本的に公立よりも給与は良く、2倍以上になることもあるそうです。
しかし、私立の先生になるには、経験や学位など要件が当然ながら高く、簡単ではないそうです。
なので、私立の先生は年配の方が多いそうです。
まとめ
マラウイの学校の先生になるには、教員養成学校、大学でしかるべき学位を取得しなければなりません。
しかし、特に専門科目で教員が不足しており、無資格で教壇に立っている先生はいます。
先生の給与は良いものではなく、プライマリーの先生については公務員の最低ラインでの給与となっています。
セカンダリーの先生も含めて多くの先生が色々な副業を行っており、一部の教育熱心な先生は教頭や校長など、管理職を目指しています。
特にプライマリーの先生だと、マラウイの大家族を養うには厳しいですからね。
マラウイの先生の待遇は年々良くなっていますが、まだ数は足りず、政府財政的にも増やすのが簡単ではありません。
毎年のように教員を増やすことを宣言してはいますが、結果が出るのはまだ少し先のように感じます。
教育は成果がでるまで長い時間がかかる分野です。
少しずつ改善していき、先生たちが精神的にも経済的にもやりがいの感じられる職業になるといいですね。
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