アフリカ、マラウイでの新型コロナウイルス(COVID-19)対策 | 2020年3月までに起こった事

コロナウイルスイメージマラウイ
コロナウイルスイメージ
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アフリカ、マラウイのような発展途上国ではどのような新型コロナウイルス(COVID-19)対策が取れるのでしょうか?
マラウイでのコロナ対策について書いてみようと思います。

私の現地マラウイで得た情報と個人的な経験ベースでお伝えしたいと思います。

2020年4月~5月のマラウイのコロナ情報については以下の記事を読んでみてください。

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アフリカ、マラウイでのコロナウイルス感染状況

ドーワ県病院
マラウイ中部にあるドーワ県病院

現地時間の2020年4月2日にマラウイで初めてのコロナウイルス感染者が報告されました。この時点では、アフリカ56カ国のうち5カ国が感染者ゼロで、それ以外の全ての国で感染者が報告されています。最多は南アフリカ共和国で1,400人を超え、1週間ほどで倍増しています。
逆に言うと、4月に入るまではマラウイは感染者ゼロだったというのは驚きです。「単純に感染者が発見されていなかっただけ」という意見もありますが、私もそう感じています。
つい数週間前まで陸路・空路共に国境は簡単に超えられましたし、隣国のザンビア、タンザニア、モザンビークでも感染者は報告されており多くの人が行き来していました。他のアフリカ諸国と同じく中国系の人達も多く生活しています。
アフリカ最多の感染者を出している南アフリカ共和国では、多くのマラウイ人が出稼ぎなどで生活しています。そして、ほぼ毎日のように南アフリカ共和国行の長距離バスが運行されていましたので、このような事から、すでにマラウイにコロナウイルスが入ってきていても何も不思議な事ではないと思っています。

マラウイ政府は4月2日時点でどのような対策を行っているのでしょうか?

アフリカ、マラウイ政府によるコロナウイルス対策

啓発冊子
マラウイ政府発行のコロナウイルス対策啓発の冊子

アフリカ各国政府は先進国での先例を参考にしつつ、かなり早めに対策をしていると思います(対策のクオリティは置いておいて…)。
マラウイでは感染者が発見される前から、かなり政府主導で色々な対策が行われてきています。

3/21にはマラウイ政府より国家災害宣言が行われ、以下の施策が発表されています。

  • 保健省による国境のスクリーニング強化
  • 国際会議等のを停止して、感染国の主催する会議等への公務員の出席を禁止
  • 感染国への不要不急の移動を避ける
  • 公立私立すべての学校、大学に対し3月23日から休校
  • 集会(結婚式、葬式、教会、集会、政治集会などを含む)を100人未満に制限
  • 高感染国からの外国籍者の入国を禁止。高感染国からマラウイに帰国した居住者とマラウイ人は自主隔離か当局による隔離対象とする
  • 今後30日は、状況と本措置の観察を継続
  • 新型コロナウイルスの高感染国の国民へのビザ発給を一時的に停止

その後、3/23から期限未定で国内の公立・私立の学校全てが閉鎖されました。

そして、各公的施設や商業施設へ対策要請が出されています。

病院への要請

  • 病院への訪問者をランチタイムの1時間に制限
  • 1人の患者に対して1人の付添人のみとし、保護者には許可証を発行する
  • 付添人は病棟の外で食事をする
  • 病棟内の混雑を避ける為、付添人は患者の家族、近親者、訪問者と病棟の外で面会する
  • 病棟内の混雑を避ける為、回復者がすぐに退院できるように院内巡回を定期的に行う
  • 病院管理者はPPE(個人保護具)を常に利用可能にしておく

首都リロングウェをはじめ、ブランタイヤ、ムズズなど各都市の主要医療施設で感染者の受け入れて体制が進められています。
隔離病棟の設置や検査環境の整備が行われていますが充分とは言えない状況のようです。人工呼吸器の数で言うと、リロングウェに5機、ブランタイヤ、ムズズ、ゾンバに各4機で、計17機しかありません。これから支援や再投資によって設備・機器の増加は考えられますが、肺炎が重症化した際に治療できる人数は相当限られています。

手術室
県病院内にある手術室

商業施設への要請

  • 手洗い、消毒設備の設置する
  • 訪問者へ手洗い、消毒を実施させるための人員配置する
  • 従業員はマスク着用する
  • 訪問者がどこから来ているのか確認する
  • 風邪の症状を早急に発見し、マスクを提供する
  • 熱と咳がある場合は自宅で待機する
  • 感染国から戻ってきた人と接触した場合、直ちに保険当局へ知らせる
  • 手袋は使用せずに、手のアルコール消毒を行う(スーパーマーケット)

教会への要請

  • 混雑を避け、教会内の人数を100人未満にする
  • 教会の催し時間をずらし、少人数で行い、可能であれば屋外で行う
  • 教会内で座る場合、1メートルの社会的距離を保持する
  • 大規模な集会、結婚式、洗礼式を一時中止する
  • 水と石鹸の手洗い場かアルコール消毒設備を設置

マラウイでは7割がキリスト教徒で、敬虔な方が多いです。
マラウイの宗教観についてはこちらの記事を読んでみてください。

銀行への要請

  • 可能な限り電子決済を推進する
  • 処理スピードを上げる為、窓口の人員を増やす
  • 入口にアルコール消毒設備を設置する
  • 守衛は全員が入行時に消毒している事を確認する
  • 行内の人数を制限する
  • 行員はマスクを着用し、紙幣を扱う際は使い捨て手袋は使用せずに、アルコール消毒を行う
  • 列では可能な限り1mの間隔を空ける
  • ATMに手洗い消毒を設置し、定期的にATMをふき取る

実際に石鹸などで手洗いができるバケツは街に出ると何度も目にしました。スーパーによっては、カートや買い物カゴのふき取りをやっているところもあります。

手洗いバケツ
施設入口に設置されている消毒薬の入った手洗い用バケツ

3/28には4/1以降、国境を超えるバスの運行が禁止されました。市内や都市間を運行するミニバスについても、乗員数が15人から8人に制限される事になります(実際には16~20人くらい乗るが…)。
この制限によりミニバスの料金が値上げされました。
マラウイのミニバスについてはこちらの記事を読んでください。

その他の対策としては、ムチンジというザンビア国境近くの中堅都市では、隔離用のテントが設置されていたり、首都リロングウェ市と第二の都市ブランタイヤ市では、路上販売、ナイトクラブ、スポーツイベント、結婚式(社会的距離を保持できる場合は可)、集会などを禁止しています。
また、ブランタイヤ市では市内の34か所のマーケットにバケツを設置して、手洗いができるようにしているそうです。

実際のマラウイ人のコロナウイルスへの意識はどのような感じなのでしょうか?

アフリカ、マラウイでのコロナウイルスへの意識

中央病院
首都にある中央病院

外国人も含めて都市部に住む所得の高い人達には、コロナ対策は浸透してきているように感じています。高級スーパーや銀行へ行くと、上記にあるような手洗いの設備が設置されていたり、入り口で従業員が手洗いをするように促していたり、お店によってはカートや買い物カゴのふき取りを実施していたりします。
海外NGOや大手企業、銀行などでは握手を行わない人もいるそうです(足や肘を使って挨拶をする)。

ただ、ここからは完全に主観となりますが、都市部でも中心部から少しでも外れると、その意識の強さやコロナウイルスに対する認識が大きく変わっているように思います。

例えば、私の住んでいるエリアと職場は都市部でも低所得者の多く住むエリアとなりますが、コロナ対策と言われるようなものは一切見かける事はありません
また、中堅都市についても特にコロナ対策を行っている様子は見られませんし、コロナウイルス自体や予防方法について誤った知識を持っている人も多くみられます。
「お湯を飲むと感染しない」「感染すると治らない」「感染すると死んでしまう」「マラウイは神が守ってくれるので何もしなくても大丈夫」など、都市部ですらこのような噂を耳にします。
情報メディアとしてラジオが低所得者の間でも一般的で、ラジオでも連日コロナウイルスについて報道されているはずなのですが、口コミの誤った噂も広がっており、マラウイ国内の今後の対応に不安を感じています。
3月中旬頃から都市部でも東アジア人に対して「コロナ~」と声をかける差別も始まりつつあります。

このような状況のマラウイですが、このような感染症で被害が大きくなるのが、衛生・医療環境、栄養状態の悪い低所得者となります。このような人達でも可能なコロナウイルス対策を、公衆衛生に詳しい知人に意見をもらいながら考えてみました。

アフリカ、マラウイで低所得者でもできるコロナウイルス対策

マラウイの低所得者でもできるコロナウイルス対策として、以下の三つがあると思います。

  • 石鹸手洗い
  • 食事
  • マスク着用

日本だと生活習慣の改善という点で、睡眠やストレスについて挙げられると思いますが、マラウイ人は基本的に早寝早起きなので、睡眠については大丈夫なのではないかと思っています。
ストレスについても先進国と比較してかなりストレスの少ない社会だと思っていますので、こちらについても省いています。
もちろん全てのマラウイ人がストレスを抱えていないわけではありません。自殺者も毎年出ていますし、貧困を原因とするストレスも多くあるとは思いますが、ここでは実効性と優先度を考えて省きました。

石鹸手洗い

なんといってもまずは石鹸手洗い
マラウイでも食事は手を使ってしますので、食事の前に手を洗う人は多いのですが、石鹸を使って洗う人はそれほど多くありません。石鹸やアルコールを使用しての手洗いは感染予防に効果があるとされていますので、食事前の手洗い以外にも帰宅後も含めてこまめな手洗いができるといいですね。

ただ、低所得世帯において石鹸の購入は簡単ではありません。MK100(約15円<2020年3月レート>)で写真のような石鹸は購入できますので、経済的に全く余裕が無いわけではないのですが、石鹸購入に回す意識が無い、というのが実情だと思います。
この辺は啓発活動で石鹸手洗いの効用を理解できれば、行動変化を起こす事はできると思っています。

石鹸
1つMK100~120で購入できます(5cm×10cm×2cmくらい)

石鹸が手に入らない場合は、食器用洗剤洗濯洗剤でも代用は可能です。それすらも手に入らない場合は、で手洗いをすると水洗いより効果があるそうです。たっぷり水を使用して手洗いをするようにしてください。

食事

マラウイの低所得者はとにかく空腹を満たす為にシマを大量に食べるので、野菜を食べる事を勧めたいのですが、農村部ではこの辺がなかなか難しいようです。
経済的な問題もありますし、場所によっては手に入る野菜が限られたりします。シマの量を少し減らして、副菜を増やして、主菜にソヤピース(大豆から作られている安価な加工食品)や玉子を加えられるとたんぱく質が採れて理想的です。
マラウイの主食、シマについてこちらの記事を読んでみてください。

ソヤピース
マラウイで人気食材のソヤピース1袋(MK100~MK120)

マスク着用

東アジア圏以外の国ではマスクの着用はあまり一般的ではありませんが、アフリカ諸国でも同じです。今では街の中でマスクをしている人を見かけますが、少し前まではマスクをして歩いているとかなり目立ちますし、怪訝な目で見られることもあります。
感染対策の面でマスクの着用については賛否ありますが、のどの保湿効果や、ある程度の飛沫防止にもなるので、しないよりはした方がいいと思っています。
あまり一般的ではないマスク着用を広めるのはなかなか難しいかもしれませんが、ファッションの一つとして受け入れてくれたら浸透が早いかもしれませんね。

まとめ

マスクの女性

まとめるとマラウイでは以下の二点がポイントになると考えています。

  • 正しい情報をどのように伝えるか
  • どこまで予防対策が取れるか

感染後の治療や医療体制については、マラウイのような途上国では隔離病棟数や医療器具数に限界が見えていますので、あまり大きな期待はできないと思っています。
感染拡大予防の可能性を一番持っているのが個人における対策だと思っていますので、ここの部分でどれだけやれるかがカギではないでしょうか。
アフリカ諸国での感染急増、コロナウイルスによる被害者が増えない事を祈ると共に、私達ができる事をやっていきたいと思っています。

虹

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