アフリカ、マラウイの環境破壊となるゴミ問題

ディランデのゴミマラウイ
ディランデのゴミ
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アフリカ、マラウイではゴミの処理方法を発端に環境破壊が続いています。
また、人の生活と切り離すことのできないゴミの周りには色々な人が関わっています。
マラウイ都市部のゴミ問題について書いてみます。

私のマラウイ生活で得た個人的な経験ベースでお伝えします。

予め書いておきますが、私は自然環境保護活動家のようなイデオロギーは持っていません。

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アフリカ、マラウイ都市部で起きているゴミによる環境破壊

ブランタイヤのゴミ最終処理場
ブランタイヤのゴミ最終処理場

ゴミ問題について、メインの舞台となるのは都市部になります。
もちろんマラウイの国内ならゴミはそこらじゅうで目にするのですが、「問題」として生活に大きな影響を与えているのは圧倒的に都市部です。
ゴミの発生している量がそもそも違いますからね。

ゴミが家庭で発生すると、基本的に「埋める」というのがゴミ処理方法になります。
マラウイでのゴミ処理方法についてはこちらの記事を参考にしてください。

農村部では、ゴミはその辺に穴を空けて埋めればそれで処理完了になります。
(自然に返りにくいゴミや土壌に有害なゴミもあるので、ただ埋めることも問題ではあるのですが…)

しかし、都市部では穴を作るスペースが作れないほど住宅が密集していて、埋めることが難しいエリアがあります。
また、都市部ではゴミ回収をしているエリアはありますが、高所得者の集まる住宅街などを中心としており限定的です。

都市部の人口の多くは貧困層で非公式な地域、いわゆる「スラム」で生活をしています。
政府では公共サービスをスラムエリアにも提供しようと努力はしているようですが、まだまだ行き届いてはいません。
スラムではゴミ回収されることはなく、ゴミ処理をする場所もないという状態です。

なぜゴミ回収ができていないのでしょうか?

アフリカ、マラウイ都市部で環境破壊を起こすゴミを回収できない理由

ブランタイヤの清掃員
ブランタイヤの清掃員

都市部でゴミの回収ができない理由は二つあります。
費用」と「地理的な要因」になります。

私が入手したマラウイ第二の都市ブランタイヤ市のゴミ回収についての情報を基に紹介します。

まずはブランタイヤ市のゴミ状況についてです。

ブランタイヤでのゴミについての施策は、ブランタイヤ市議会(Blantyre City Councile:BCC)の保健社会サービス局(Department of Health and Social Service:DHSS)が担当しています。
人員規模としては、BCC職員が4名、清掃員などの人員が計430人ほど、ゴミ回収のドライバーが計10数名ほどだそうです。

清掃員やドライバーは全員が毎日稼働しているわけではないので、登録されている人員数になります。
清掃はたぶん、平日は市街地で毎日やっているような印象があります。
ですので、清掃の部分で言うとかなりの人員が毎日稼働していると思います。

ブランタイヤ市のでゴミの排出量は、家庭ごみ事業ゴミを合わせて1日472トンと見積もられています。
ちなみに同じく100万人都市の仙台市は家庭ごみだけで1日約506トンです。
やはり先進国はゴミが多いですね。

人口の分布している住居エリア(非公式の住居エリアも含む)を対象にして、45%のエリアをゴミの回収エリアとしてカバーしています。
一方、回収量としては家庭ゴミ、事業ゴミを合わせて110トンを超えるほどだそうです。

ゴミの回収は高所得者の住宅エリアを中心に行われているので、45%というエリアをカバーしているにも関わらず、回収量は25%以下ですので、高所得者層が広いエリアに住んでいることが伺えますね。
低所得者は密集して住居を構えています。

このような回収状況のブランタイヤ市を例に2つの問題を紹介します。

費用が足りない

道路の清掃は平日は毎日のように行われています。
ゴミの回収も、市街地のゴミ箱の回収は毎日行われており、家庭ゴミの回収は週に1度行われています。
また、市内数か所に配置されている「スキップ」(ゴミを溜める大きな入れ物)の回収も週に何度か行います。
マラウイのゴミ最終処理場は ゴミを置いてくるだけですが、管理にはそれなりに費用が発生していると言います。

このような事業費に見合う予算が市で用意されていません
給与の未払いなどが発生したという話は聞きませんが、実際にゴミの回収設備となる「スキップ」が不足していたり、回収用の車両が少なかったり、整備ができず稼働していない車両もあるそうです。

担当者は予算を増やしたいと考えているようですが、そうはならず、限られた予算内でできることをやっている、といったところのようです。

ゴミ回収に入れない

費用が足りなくて回収が間に合っていないという現実もあるのですが、物理的に回収ができないエリアも存在しています。
低所得者層の住む、いわゆる「スラム」エリアです。

ブランタイヤ市で具体的に地名を挙げると「チリンバ」や「ディランデ」といったエリアになります。
ここは元々非公式な居住エリア(本来は住むことや住宅の建設を行えない)だったのですが、現在は住居管理が行われています。

主に地方から出てきた低所得者が集まって住んでおり、狭い山裾にあたるエリアに多くの住居がひしめき合っています

Google Erathで見るディランデ地区
Google Erathで見るディランデ地区

この住居エリアはほぼ無計画に住宅が建設されていっていますので、ゴミを埋める場所や集積所がありません
ゴミはちょっとしたスペースにまとめて山積みにしてあったり、川に投げ入れるのが日常になっています。

一度大雨が降ると、ゴミが流れ出し、衛生環境が悪化して感染症が流行るということも珍しくありません。

このような密集エリアにはゴミの回収車が入って行くことはできません
そして、ゴミを回収する仕組みもないですし、物理的に回収所のようなものを作るのも難しい状態です。

これはブランタイヤ市保健社会サービス局が作成したゴミの啓発ビデオになります。
ブランタイヤ市のディランデ地区のゴミの状況が垣間見れます。


この2つの問題から都市部でのゴミ問題は解決が見えません。

どちらにも共通して言えることは、「政治」が解決できることだということです。
ですので、議会議員や彼らを支持する市民が、ゴミ問題を「優先事項」とは考えていないのだと思います。

もちろん中には力を入れている議員もいます。
ブランタイヤ市議会のGertrude Chilamboさんあたりはゴミ問題に取り組んでいるのを目にします。
(彼女の選挙区にディランデが含まれているということは大きな理由ではあるとは思います)

NGOや地元企業でゴミ問題に関心のある人たちもいますが、やはり市民全体の意思としてはまだまだ弱いのだと思います。

ゴミ問題の解決が、市内の公衆衛生、犯罪率、経済など色々な面でプラスに働くことを多くの人に知ってもらわなければなりませんね。
私も微力ながらそれに寄与していきたいと思います。

この都市部でのゴミによる環境破壊ですが、具体的にどのような弊害が起きているのでしょうか?

アフリカ、マラウイ都市部で環境破壊を起こすゴミの現状

水とゴミ

ゴミが住宅地にそのまま放置されると、衛生環境は悪化していきます。

マラウイでは人口の半数が18歳未満で、子どもが多くいる国で、住宅地ではそこら中で子どもたちが遊んでいます
ゴミ山で子どもたちがゴミを触って、傷口や手や口からばい菌が入って病気になる可能性があります。
最悪、破傷風などで死んでしまうこともあるかもしれません。

ゴミの多くは川に捨てられることが多く(たぶん流れていくからだと思います)、水が汚染されれば、コレラなどの感染症の発生や蔓延が懸念されます。
水場の汚染によるコレラの発生は毎年マラウイ国内のどこかで報告されている典型例です。

都市部とは言え、低所得者の住むエリアには水道が引かれていないところも多いですし、引かれていても、節約のために洗濯(人によってはお風呂も)は川の水を使う、という人も結構います。

大雨が降るとゴミが流れ出し、川に溜まっていたゴミも下流へ流され、衛生の悪化が叫ばれています。

また、都市部でも自給や販売のための農地を管理している人もいます。
水環境が悪くなると農作物に影響が出ることもあるそうです。

前述のように、都市部にある低所得者エリアではゴミ回収が難しい状況です。
回収が難しいのであれば、その場所で処理してしまうのは一つの方法だと思います。

少しスペースは必要になりますが、低所得層の住む密集住宅エリアの近くに、コンポスト処理場を用意するのは一つの策です。
ゴミ集積所ではなく、コンポストのステーションを作ることで、生ごみの処理をしつつ堆肥を生産し、安価で販売処理ができます。

マラウイの貧困エリアでの廃棄物の94%が有機物(生ごみ)だという研究がありますので、この大部分がコンポストで処理できるはずです。
実は、このスキームはリロングウェの住宅地で実施されており、成功が認められればブランタイヤでも運用できるのではないかと考えています。

家庭ゴミ以外に事業ゴミでも環境破壊が懸念されています。
これは途上国ではよく見られますし、日本でも以前に社会問題となりましたが、工場などで不法な産業廃棄物の処理による問題もたまにニュースで取り上げられています。

最近では製油工場(食用油)から変色した水が流れ出していてニュースになっていました。
ちなみに、ゴミの不法投棄はMK1,000万(約137,000円<2021年1月レート>)の罰金と10年以下の懲役となります。
意外と刑罰は厳しいんですよね。

まとめ

マラウイでのゴミ問題の個別の影響は、主に都市部で発生しており、特に貧困層の住む住宅が密集しているエリアで深刻になっています。

ただ、この問題のゴミ処理という部分では「政治」での解決が相当に可能です。
そしてその「政治」を動かすには国民の意識変化が必要です。

ゴミの放置が問題であるのはわかっていますが、そこまで大きな問題だとは思っていない、というのが実情だと感じています。
実際にゴミが周りに溢れていても生活できていますからね…。

ゴミ問題を解決できると、生活、健康、犯罪、経済と多くの分野への効能が期待できます。
経済発展が進むと、自然と環境意識は強くなっては行くのですが(自分の生活が担保される)、マラウイでは早いタイミングから生活環境や自然環境を守っていって欲しいと願います。


この記事ではプラスチックゴミについては触れませんでした。
正直、マラウイでのプラスチックゴミの問題はまだ2次的な問題であって、優先度は低い問題だと思っています。
まずは「ゴミの処理」の意識付けが必要です。

マラウイでは薄いプラスチック袋(ポリ袋)の製造・販売は法律で禁止されていたりもしますが、プラスチックゴミの処理については問題があるのは事実です。
個人的にプラスチックの利用について、色んな意味で「効率的に」利用することには賛成ですが、マラウイにおいてはそのノウハウも乏しくゴミへの意識も低いので、この国でのプラスチックの利用はある程度制限が必要だと思っています。

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