アフリカ、マラウイの小規模ビジネスにおいてよく挙げられる問題が「資本」、お金ですね。
であれば、彼らに融資(お金の貸し出し)すればビジネスを始めるチャンスを与えられるのではないかと考え、少額・無担保・低利率のプチマイクロファイナンスを行ってみたところ、貸し出した各個人の調査不足の為に見事に失敗しました。
その失敗について書いてみようと思います。
目次
◆マラウイの所得水準
◆マラウイ都市部の低所得者層のビジネス
◆マイクロファイナンスはハードルが高い
◆マラウイで行ったプチマイクロファイナンス
◆マイクロファイナンスの返済不履行と失敗
◆まとめ
私は今現在(2020年2月)マラウイの都市部に住んでいますので、私の生活ベースで経験した事をお伝えしたいと思います。なので、農村部や他の地域とは生活の様子が異なったり、私の主観を通した意見となる事もありますので、それを踏まえて読んで頂けると嬉しいです。
マラウイの所得水準
2020年2月現在マラウイの最低賃金は日給MK1,346.16(約200円<2020年2月レート>)で、失業率5.43%(2018年ILO)と発表されていますが、 正直どちらも実態として妥当な感じがしません。
そもそも政府の行っている統計が正しいかどうか怪しいというのもありますが、都市部にある低所得者が多く居住するエリアでそこに住む人に話を聞くと、そのエリアに住む20%~30%の住民が定職を持っていないと言っていました。
また、低所得者層で仕事を見つけたとしても、法定最低賃金以下で働いているとよく聞きます。
職を持っていていても教育費(小学校は無償)が払えなかったり、食べ物に困る人も多くいます。ただ、この国の良いところとして、コミュニティがお互い助け合っていますので、親戚や近所の人に助けてもらったりはしているようです。
食べ物で言うと、畑があれば自分で収穫している家庭も多いので(たぶん農村部ではかなり自給してるのではないかと思います)、食いつなぐことはできているようです。
それでは、都市部の低所得者はどのような仕事をしているのでしょうか。
マラウイ都市部の低所得者層のビジネス
このような状態でのビジネスでは、ちょっと高額なものを仕入れる事もできませんし、規模の大きいサービスもかなりやり辛くなります。先行投資の必要なビジネス(運送やIT)も当然ながら無理です。
多くの人は、やはり自身の利用できる限られた資本を利用するというところで、肉体労働がメインになります。
誰かのうちで家事をやったり、掃除をしたり、少し技術があれば大工や板金工をやったりしています。
私の職場で掃除などをしている人は、色々な事をやって生活費を捻出しています。
掃除、雑用、草刈り、家屋修繕、靴直し、物販などなど、こちらから依頼すると器用になんでもやってくれます。
自宅の警備員は、警備の仕事以外に食品の販売、塗装なんかをやっています。
街に出ると路上で食べ物や野菜、生活用品などを売っている人をよく見ます。果物、野菜、お米、ポテトチップス、服、雑貨、ドーナツなどなど。
都市部ではちゃんとした店舗を構えて商売をやっているマラウイ人もいますが、私の感覚ではそのレベルまでいくと、マラウイでの「成功者」の一人だと思います。
ただ、そのようになれるのはごく一握りのマラウイ人のみで、中~大企業の経営者の半分以上はインド系マラウイ人だと言われています(もちろん彼らもマラウイ人です)。
マラウイのビジネス界については別記事で詳しく書こうと思います。
多少なりとも肉体労働以外のビジネスを始めようとすると、やはり先立つものが必要となりますよね。
お金を借りなけれならないのです。
マイクロファイナンスはハードルが高い
銀行から融資を受けるには、マラウイでは基本的に担保が必要となります。もちろん低所得者層には担保にいれられるような資産はありませんよね。ちなみに借りれたとしても、年利15%前後と利息が高いです。
そうなると、次の選択肢はマイクロファイナンスになります。
Wikipedia | マイクロファイナンス
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%B3%E3%82%B9
マラウイにはマイクロファイナンスを行っているNGOや銀行は多くあり、種類や借り方にもよるのですが、ざっくり年利20~40%ほどではないでしょうか。短期のもので月利3~5%くらい。
日本の銀行で融資を受けた事がある人ならわかると思いますが、利率はべらぼうに高いですよね。マラウイの銀行融資の15%も高いのですが、日本だと融資期間にもよりますが3~4%ほどではないでしょうか。
しかし、マイクロファイナンスはなんと言っても無担保で貸し付けが受けられます。
無担保というところを考えると、貸し倒れリスクや、それを防ぐためのサービスやケアなどを考えると利息が高くついても仕方ないような気はします。
高利率以外にも細かくクリアしなければならない事はあるのですが、残念ながら一介の低所得層の個人にとって簡単に借りられるものではありません。
そんな背景から私が個人で融資をしようと決めました。
マラウイで行ったプチマイクロファイナンス
そんな資金作りに苦戦している知り合いなどに、2カ月金利2%で個人に対してではなく、個別の「ビジネス」を対象に融資してみることにしました。
条件は以下の通り。日本で融資受けるのと同じ感じです。
・事業計画の提出
・定期事業報告の実施
もちろん事業計画に私が納得しなければ融資はしませんし、事業報告を怠れば融資を中止して返済を開始してもらいます。
実際に5人の方に融資を行い、それぞれが実施したビジネスは卸売り販売と食品製造販売でした。
融資額は最高額で一人MK50,000(約7440円<2020年2月レート>)ほどで、ビジネス自体は事業計画に実現性は大いにありましたし、おかしなところもありませんでした。
実際に事業報告も受け、私からの助言もありビジネス自体は皆上手くいき、資本を減らす事なく計算上は利益を上げる事ができました。
しかし、いざ返済となると色々問題が出てきたのです。
マイクロファイナンスの返済不履行と失敗
ビジネスはうまくいきましたが、ここで私は大きな過ちをしていた事に全く気づきませんでした。
商売自体の仕入れ、加工、販売などのお金の流れでは間違いなく利益を上げていたのですが、その後のお金の管理についてはノータッチでした。
というのも、融資を行った5人は皆知り合いか近所の住人で、もともとある程度ビジネス経験があったので「お金の管理は返済計画も含めてできる」ものだと思い込んでいました。
「お金の管理」と言っても返済元本に手を付けないというだけなのですが、実際のところ、それすらできていませんでした。
正直、このあたりのいわゆるキャパシティビルディング(能力開発)が不要だと思い込んでいたのが間違いでした。
マイクロファイナンスや何かの事業を実施するにあたって、キャパシティビルディングは当然ながら前提として必要になります。それは理解していたつもりなのですが、話をした時の印象や思い込みでそこについては手を入れず、全て任せてしまったのが間違いだったように感じています。
事業だけでなく返済まできちっと計画してもらうべきでした。
まとめ
最終的に5人のうち1人は自宅で働く警備員なので、給与から月賦返済を開始して現在返済中。
残り4人の現時点での完済率は合計金額の20%ほどで、このままでは融資期間が延長されて返済金額がどんどん膨れ上がっていきますので、利率を0%にして保留のまま返済できるまで待っている状態です。
日本円で10,000円程度、返ってくるかわからない状態にはなっていますが今回はとても良い経験となりました。
サポートするのであれば、ちゃんと過信せず基本から全て見るという事の重要性を改めて感じました。
借入をした5人は良いビジネスができたと言ってくれているのですが、ちゃんと返済まで計画しようね。
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