「狂犬病」をご存じでしょうか?
世界各所で確認されている感染病ですが、アフリカのマラウイでも毎年感染による死者が報告されています。
発症するとほぼ100%死に至る恐ろしい病気「狂犬病」について書きます。
私のマラウイ生活で得た個人的な経験ベースでお伝えします。
アフリカ、マラウイでも報告されている「狂犬病」とは?
「狂犬病」とは、哺乳類間でのウイルス感染によって引き起こされる病気です。
感染源の多くは犬です。
ただ「狂犬病」という名称がついていますが、犬からだけでなく哺乳類全般から感染しますので、猫や家畜などからも感染します。
発症すると治療方法は無く、ほぼ100%死亡する恐ろしい病気です。
日本では2020年、2006年に海外旅行者による国内での感染発見の事例がありますが、国内のみでの感染例はここ60年近くないようです。
世界で見ると、年間55,000人が狂犬病によって亡くなっていると報告されています(2016年WHO)。
狂犬病のウイルスに感染後、体内でどのような感染経路をたどるかによるようなのですが、発症まで1カ月~3カ月かかり、長い場合は数年後に発症するケースも確認されています。発症が早いと数週間という場合もあるそうです。
発症後は1週間~2週間で死亡するとされています。
よく例に出される症状として「恐水症」があり、水が飲めなくなることによって水に恐怖を感じる症状が有名です。
発熱、頭痛、全身倦怠や嘔吐などを起こし、最終的には昏睡状態となって、呼吸が麻痺することによって死に至るそうです。
狂犬病はウイルスによる感染ですが、空気感染はしません。
体液を介して感染するので、噛まれたり、引っ掻かれたり、傷口を舐められることによって感染します。
それでは、一般的な狂犬病の対処方法はあるのでしょうか?
アフリカ、マラウイに多いとされる「狂犬病」の対処方法は?
動物から感染しますので、やはり基本的には動物に噛まれたり、傷を舐められたり、引っ掻かれたりしないようにする、というのまずは第一になると思います。
特に狂犬病の流行地では、動物全般に近づかないというのが賢明です。
マラウイの私の自宅周りにも犬がたくさんいます。
じゃれてくることもあるので、絶対触れないようにするのは難しいのですが、できるだけ触らないようにしています。
それでも、何かの拍子に噛まれたり、傷口を舐められたりした場合、どうしたら良いのでしょうか。
狂犬病は発症したらほぼ100%死亡します。
「発症」したら死んでしまいますので、発症を止めることは可能です。
要は体内に入り込んだ狂犬病のウイルスを増やさずに殺してしまおうということですね。
もし噛まれてしまったらまずは噛まれた部分をよく流水でよく流します。
そして、病院で狂犬病ワクチンを4回~5回にわけて摂取すると防ぐことができるとされています。
1回目は咬傷から24時間以内、2回目は3日後、3回目は7日後という感じで1カ月ほどかけてワクチンを投与します。
初めの24時間はなかなかタイトなのですが、早めにワクチンを受けるのが重要だそうです。
事前にワクチンを受けておくことも可能ですが、事前に受けていたとしても計4回~5回は受けることを推奨されています。
私は既に3度狂犬病ワクチンを事前に受けていますので、もし狂犬病ウイルスを持った犬に噛まれた場合、あと1~2回はワクチン投与をしなければならない、ということになります。
防ぐことができるとは言え結構大変な手続きになりますので、動物に近づかないというのが賢明のような気がします。
あと、狂犬病ウイルスの感染確認方法としてできることがあります。
もし動物に噛まれた場合、ワクチンの接種は平行して行うのですが、噛んだ動物を観察できる状態にしておくことが重要です。
野良犬や野生動物なんかだと難しいのですが、飼われている動物であればできると思います。
狂犬病に罹っている動物なのであれば、感染から数日~2週間ほどで発症して死んでいるはずですので、咬傷した動物を観察できる状態にしておいてください。
アフリカ、マラウイでの狂犬病はどのような状況になっているのでしょうか?
アフリカ、マラウイの「狂犬病」の現状
アフリカ全般そうなのですが、マラウイも狂犬病の流行地とされています。
世界で見ると、南・東南アジアの次にアフリカが多いといったところでしょうか。
外務省からは、マラウイ渡航にあたって狂犬病の免疫保持も推奨されています。
1995年で少し古い統計ですが、マラウイ国内の狂犬病感染源の80%以上が犬で、5%がジャッカルとハイエナだったというものがあります。
ちょっと特異な例ですが、10年以上前にドーワという地区で狂犬病のハイエナが多くの人を襲って、死者が複数出たという事件があったそうです。
WHOによると、マラウイでは毎年500人もの人が狂犬病によって亡くなっているそうです。
国内には400,000頭の犬がいるとされており(たぶん野良犬はカウントしきれていないはずなので、これ以上だと思います)、そのうちの0.5%にしか狂犬病ワクチンが打たれていないと報告されています。
マラウイ国内の犬の頭数から推定すると、狂犬病の撲滅には70%のワクチン接種が必要とされているようですので、道のりはまだまだ遠いですね…。
マラウイでは日本と同じく、犬は生活の中に溶け込んでいます。
国内のどこでも見かけますし、番犬として飼っている人も多くいます。
私の自宅周りにもたくさん犬はいますし、私が飼っているわけではないのですが、毎日自宅の周りにいて、知らない人が来ると番犬のように吠えてくれるので助かっています。
マラウイでは「狂犬病」は英語で「Rabies」として、またはチェワ語の「Chiwewe」として、学校教育でも取り入れられていて、みんなよく理解しています。
理解していても、やはり噛まれたりして狂犬病にかかってしまうことはあるのだろうと思います。
対処法でも書いたように、発症しなければ死にいたることはないのですが、医療体制が整っていないために多くの人が狂犬病で死んでいるという状態です。
農村部で生活していると、狂犬病のワクチンをストックしているような大きな地区病院にすぐにかかることは難しいことがあります。
また、地区病院に行けたとしても、常に狂犬病のワクチンをストックしているわけではありません。
日本の外務省も、マラウイ国内での狂犬病ワクチンの提供は不安定だとしています。
医療体制の充実と同時に、犬へのワクチン接種も同時に行わなければなりません。
政府や海外NGOが農村部で狂犬病発生件数の多い地域を中心に、犬への狂犬病ワクチン接種を毎年行っています。
Mission Rabiesという団体は何度か新聞で狂犬病関連の活動で目にしています。
それでは、もしマラウイで動物に噛まれてしまった場合、どうしたらよいのでしょうか?
アフリカ、マラウイで「狂犬病」の疑いが出たら?!
もしマラウイで動物に噛まれたり、引っ掻けられて傷ができてしまった場合、どうしたら良いのでしょうか?
まずは傷口を流水で良く洗い流します。
次に最寄りの都市にある大きな病院へ行って状況を説明しましょう。
その時に過去に狂犬病のワクチンを何度打っているかなどの情報も必要になるはずです。
マラウイ大使館で医療機関を紹介していますので、こちらを参考にしてください。
地区レベルの病院(District Hospital)では狂犬病ワクチン接種は難しいかもしれないので、都市部から離れた場所に生活している場合は、事前に最寄りの病院にワクチンのストック状況を確認しておくのも手だと思います。
もしどうしても病院で受けられない場合、大使館やJICA事務所に問い合わせると情報提供してくれると思います。
特にJICA事務所では関係者用のワクチンを用意しているはずなので、緊急であればそれを提供してくれるかもしれません。
まとめ
「狂犬病」は発症するとほぼ100%死亡してしまう恐ろしい感染病です。
しかし、発症前にワクチン接種することによって対処することは可能です。
マラウイでは毎年多くの人が医療へのアクセスの問題により狂犬病で死亡しています。
ですので、根本的な対処として犬へのワクチン接種が政府やNGOによって毎年実施されています。
狂犬病は恐ろしい病気ではありますが、動物と交わらなければ感染はしませんし、もし咬傷したとしても発症を抑えることはできます。
マラウイに渡航する際には、医師との相談の上、あらかじめ2回から3回ほどワクチンを接種しておくことをお勧めします。
また、長期滞在する際には、最寄りの病院への確認や、大きな病院へのアクセス方法を確認しておいてください。
また、もし動物をペットとして飼う際には、ペットへの狂犬病ワクチン接種を必ず行いましょう。
準備ができていれば、対処できる感染病ですので、しっかり備えてマラウイ生活を送ってください。
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