アフリカ、マラウイでも行われた「万村通」プロジェクトを知っているでしょうか?
中国の行う衛星放送を利用した国際協力プロジェクトになります。
アフリカ諸国で行われている「万村通」プロジェクトについて、マラウイでの状況について書いてみたいと思います。
私のマラウイ生活で得た個人的な経験ベースでお伝えします。
アフリカ、マラウイでの中国の衛星放送プロジェクト「万村通」とは?
「万村通」プロジェクトとは、中国政府の打ち出したアフリカでの途上国支援プロジェクトの一つになります。
2015年に中国の習近平代表が、ヨハネスブルグでの中国アフリカ協力フォーラムでこのプロジェクトについて発表されました。
アフリカの10,000の村に衛星放送を届けることを目標としています。
農村部の人たちの情報へのアクセスを支援しようという試みですね。
衛星を使えば、通信としてのインフラ設備は受信機のみとなりますので、それほど大規模なインフラ投資は必要となりません。
導入するにはハードルの低い支援ですので、広く実施することができるのだろうと思います。
2020年時点でサハラ以南のアフリカ諸国25カ国で、文字通りの10,000以上の村で衛星放送設備を設置してきています。
アフリカ、マラウイでの中国の衛星放送プロジェクト「万村通」はどこで行われている?
マラウイでの「万村通」プロジェクトは2018年8月に開始され、2019年に11月に完了が発表されています。
マラウイの500の村で20世帯が衛星放送を受信できるようになっているということです。
プロジェクトで配布されるのは以下のセットです。
- 大型テレビモニター
- 2台のプロジェクターデコーダー
- 3台の衛星アンテナ
- 3セットのソーラーパネル
- 電力用バッテリー
1村で20世帯が受信できるようになるとされているので、配布される3台のアンテナから20世帯分に配線するのだと思います。
ソーラーがついているところも、なかなか土地柄を理解していますよね。
マラウイの農村部へ行くと、このような絵の描かれた建物を見ることがあります。
私も何度も見かけています。
このサインがあるところには万村通の衛星放送が来ているところになります。
マラウイでのあるあるですが、聞いた話によると、設置後にアンテナや受信機器などが盗まれてしまっていてもう使えない状態になっているところもあるようです。
気になる放送内容なのですが、3つのローカルチャンネルを含む21以上のチャンネルがあるそうです。
この衛生放送を運営しているのは、StarTimesという中国の衛星放送事業者になります。
「万村通」プロジェクトを請け負っている中国企業です。
ということは、3つのローカルチャンネルは良いとして、その他のチャンネルはこのStarTimesの配信するチャンネルということになります。
基本的にStarTimesは番組制作はしていないようなので、他からコンテンツを買い取って放送しているのだと思いますが、多くは中国の放送局の内容だと思われます。
日本でも昔は特にそうでしたが、テレビは日常生活に根付くエンタメですので、ここに中国文化や中国の情報を流せる放送があると、マラウイ国民への中国への親近感は醸造されやすくなるのではないでしょうか。
そういう意味でも中国の戦略として効果のあるものだと思います。
この中国起業「StarTimes」とはどのような会社なのでしょうか?
アフリカ、マラウイでの中国の衛星放送プロジェクト「万村通」を請け負っているStarTimesとは?
もしアフリカの国に滞在したことのある人だと、このロゴに見覚えがあるかもしれませんね。
「StarTimes」は中国の衛星放送事業者でアフリカのサハラ以南の37カ国で展開しています。
アフリカでは有線や地上波放送がインフラ整備不足の問題から、日本以上に衛星放送が利用されています。
StarTimesはアフリカで1,200万人の契約者を抱えていると言われています。
ちなみに日本の「スカパー」の2019年度の契約者数は317万人でした。
ですので、貧しいとされているアフリカ諸国で1,200万人はかなりの数であることがわかります。
ちなみにアフリカ人気の衛星放送DSTVの加入者は1,900万人ほどとされているので、StarTimesは結構人気のある衛星放送なのがわかります。
中国系の人たちが多く加入しているというもあるかもしれません。
放送されている番組には、もちろん中国の番組が多いようなのですが、現地語に翻訳された中国の作品も放送されているそうです。
StarTimesの特徴としては、契約金額が他の衛星放送事業者よりも安いと言われています。
私の知り合いにはStarTimesを契約している人はいないので、契約料がいくらなのかは不明ですね。
マラウイ人にとってテレビとはどのようなものなのでしょうか?
アフリカ、マラウイでの中国プロジェクト「万村通」に見えるテレビの存在
マラウイでも日本と同じようにテレビは重要な娯楽の一つとなっています。
これは農村部でも都市部でも変わりはないと思います。
ただ、テレビの存在の仕方が農村部と都市部でちょっと異なります。
都市部での中~高所得者の自宅には必ずといっていいほどテレビがあります。
そして、いつもスイッチが入っていて何かしら誰かがテレビを見ていますね。
この辺は日本と変わりないような気がします。
テレビは情報収集のツールであり、大切な娯楽となっています。
農村部では所得上、各家庭に一つ持っているところは少ないです。
公務員なら小さいテレビを持っていたりしますが、そうでなければテレビよりもラジオが一般的です。
農村部では誰かのうちにテレビがあると、そこに集まったり、有料でテレビを見せている人もいます。
テレビにDVDの映画を流して「映画館」を運営しているところもよく見かけますね。
「万村通」プロジェクトでは、学校や集会所のような場所にもテレビが設置されているようなので、その近所の人たちが集まってテレビ放送を見ていたりするそうです。
テレビではローカルニュースはもちろんですが、衛星放送を契約していれば海外ドラマやスポーツも観ることができます。
私の主観ですが、スポーツはサッカー、ドラマはインドドラマが人気のような感じがしています。
レストランなんかに行くと、この二つかローカルニュース番組がよく流れているイメージです。
では最後に、「万村通」の目指す情報アクセスについて書いてみます。
アフリカ、マラウイでの中国プロジェクト「万村通」から見える情報アクセス問題
中国政府の実施する「万村通」プロジェクトの目的である、農村部の情報アクセスについて私の考えを書きます。
私もこのプロジェクトが目標としている部分については、同じ意見を持っています。
農村部の情報アクセス機能は、マラウイの経済発展に大きな意味を持っています。
ビジネス面では特に情報はチャンスを手に入れたり、ピンチを回避するのに役に立ちます。
そして、情報はイノベーションを起こすきっかけにもなります。
本当は農村部の人でもみんながインターネットを利用できるようになればベストなのですが、インフラ面でそうなるのはまだまだ時間がかかりそうです。
ですので、「万村通」によって農村部に、映像でのニュース配信や海外の情報が届くようになるのは、情報にアクセスする方法として一歩前進しているはずです。
ただ、これは中国による政治的な背景の強い支援であり、配信されるコンテンツは中国企業によって運営されています。
このプロジェクトによってマラウイ国民の中に中国のプレゼンスは多少なりとも大きくなっているはずです。
まとめ
中国の行う「万村通」プロジェクトは、アフリカの10,000の村に衛星放送を届ける支援プロジェクトです。
マラウイでは500の村で実施されています。
配信は中国企業のStarTimesが請け負っており、中国の番組も配信されています。
マラウイでもアフリカの他の国と同じく、カンフーが子どもに人気です。
アフリカには中国映画のDVDが、正規・非正規の流通問わずに多く出回っており、「万村通」はそれに拍車をかけたはずです。
農村部での情報アクセスという点では少なからず前進のある支援だとは思いますし、中国によるマラウイ人に与えるインパクトは小さくはない政策になったと思います。
もしマラウイの農村部に足を運んだ際には、「万村通」のサインを探してみてください。
マラウイでも中国支援の力強さを感じるはずです。
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