アフリカ、マラウイのような発展途上国では、新型コロナウイルス(COVID-19)についてどのようなことが起きているのでしょうか?
前回の2020年4月の寄稿から5月までにマラウイで起きたことを書いてみようと思います。
2020年4月時点でのマラウイの状況については、以下の記事を読んでみてください。
現在私は現地マラウイでコロナウイルス感染予防の啓発活動を行っていますので、それで得た情報と個人的な経験ベースでお伝えしたいと思います。
アフリカ、マラウイでのコロナウイルス感染状況 | 2020年4月~5月
2020年6月1日現在、アフリカ全土で146,000人を超える感染者と4,200人の死者が報告されています。
南アフリカ共和国で32,000人以上の感染者(死者683人)、エジプトで24,000人以上の感染者(死者959人)となっています。
マラウイでの新型コロナウイルスの感染者数は、2020年6月1日現在284名となっており、死亡者数は4名となっています。
日本では初の感染者の報告から5週間で300人の感染者となりました。一方、マラウイの4月2日の初感染から2カ月で284名ですので、数字上は当初懸念されていたほど爆発的に感染が広がっているようには見えません。
もちろん医療インフラの弱いのマラウイですので、感染者を把握できていないということは充分に考えられます。
データの信憑性に疑問があるものの、ここ最近の5月28日と29日の2日間で172人の感染者が報告されており、急増の兆しを見せています。
マラウイ政府は2020年4月~5月の間で、どのような対策を行っていたでしょうか?
アフリカ、マラウイ政府によるコロナウイルス対策 | 2020年4月~5月
2020年4月~5月の間でマラウイ政府によって実施されたコロナウイルス対策を紹介したいと思います。
マラウイ政府よるコロナウイルス対策「学校閉鎖」
3月よりマラウイ政府は私立・公立全ての学校を閉鎖させており、6月に入ってからも継続されています。
本来3月には2週間ほどの学期休みがあるというものの、丸3カ月以上生徒たちは授業を受けられない状態になっています。
マラウイ教育省はオンラインでの利用できる教材を提供しています。
また、通信会社のTNMが中高等学校の第1学年と第2学年に対して無料で教材が利用できるようにしています。
しかし、インターネットが利用して学習のできる生徒はごくごく一部です。
学校閉鎖の長期化により、退学率の上昇も懸念されています。今後、学校再開のタイミングがどうなるのか、学校関係者や学生のいる家庭は注視しなければなりません。
マラウイ政府よるコロナウイルス対策「リモートワーク」
4月19日には、マラウイ政府より各自治体へ、公務員のリモートワークをするように指示を出しました。
私自身が確認はできていませんが、率直に考えてマラウイでリモートワークが完全にできるとは思えません。できたとしてもごく一部だと思います。特に公務員であれば、なおさらリモートでできる業務は限られてくると思います。
マラウイ政府よるコロナウイルス対策「医療従事者への待遇向上」
4月20日には、以前より医療従事者によりデモなどで訴えられていた手当の増額が決まりました。
具体的には昼食手当としてMK4,000(約580円<2020年6月レート>)、夕食手当としてMK6,000(約875円)が支給されます。
また、危険手当も大幅に上げられました。
しかし、一部の医療従事者は危険手当の増額とPPE(個人保護具)の不足は継続して訴えています。
上記以外で最も大きな政府施策は「ロックダウン」でしたが、見事に失敗します。マラウイ政府に何が起こったのでしょうか?
アフリカ、マラウイで起きた政府による「ロックダウン」の失敗
マラウイ政府は4月18日から3週間にわたるロックダウンを行うことを宣言しました。
それ以前には、すでに移動や商業活動について制限がかけられていましたので、この「ロックダウン」の施策について全国でデモが起きました。
その中、HRDC(人権保護委員会)という民間団体が裁判所へ異議を申し立ました。施策が裁判所によって一時差し止められた後に、経済に大きな影響を与えるとして無効とされます。
貧困層はその日や翌日の生活費を稼ぐためにマーケットや路上に商売をしに行きます。ですので、経済活動の停滞は死活問題となります。
私の自宅は都市部でも低所得者の集まる地域ですので、コロナウイルス対策による影響を受けている人は多くおり、ロックダウンの施策が発表された後はデモも行われました。
この地域は現政権の支持者が多いのですが、それでも今回のロックダウンには反対者が多いです。現政権の選挙カーが来た際には投石をする人もいたようです。
コロナウイルスの様々な影響によってマラウイ国内では、政府施策以外に何が起きているのでしょうか?
アフリカ、マラウイでコロナウイルスによって起きていること | 2020年4月~5月
コロナウイルス感染拡大おかまいなしのマラウイ大統領選挙
マラウイでは2020年6月23日に大統領選挙の再選挙が実施されます。
現在、その選挙に向けて選挙活動が全国各地で行われています。マラウイの選挙は日本とは違い、熱量がハンパありません。生活に直結する問題ですので大イベントとなりますので、どこの選挙演説でもこのような状態です。
三密なんてお構いなしです笑
マラウイの再選挙については以下の記事を読んでみてください。
マラウイのミュージシャンがコンサートを再開
現在、マラウイ国内ではコンサートを含めた大規模な集会は禁止されています。しかし、頻繁に行われているこのような選挙活動にミュージシャン達が疑問を投げかけ、政府の要請を無視して一部のミュージシャンがコンサート活動を開始しています。
コンサート開始のニュース以降、ミュージシャンが逮捕されたというような話は聞いていませんので、警察は黙認しているのかもしれません。
マラウイ公務員による危険手当要求
医療従事者への危険手当の改定を皮切りに、色々な業種で危険手当を要求する動きが出ています。
国境警備員、入国管理員、刑務所刑務官、国境を超えるトラックドライバーなどがコロナウイルス感染の危険があるという事で、手当の増額を要求しています。
マラウイの医療機関の停止
医療機関の停止と言っても、当然ながら医療崩壊はまだ起きていません。感染者数はまだ少ないですからね。
上記の医療従事者によるストライキによって、患者に多少影響が出ているという話がありました。
ブランタイヤ市にある南部最大の総合病院であるクイーンエリザベス病院で行われたストライキ中に妊婦が搬送されたものの、ストの影響で出産対応ができずに、ブランタイヤから車で1時間程度のところにあるチョロで出産をした妊婦がいたそうです。
ストの行われた日曜日は、18人の妊婦が受診を断られたそうです。
マラウイの通信会社が手数料を無料
マラウイの通信会であるTNMとAirtelが、各社の提供する電子通貨の送金手数料を無料すると発表しました。
マラウイでは思いのほか電子通貨が一般的に利用されています。紙幣による感染拡大の防止と、電子通貨の普及も目的の一つにあるのではないかと思います。
南アフリカ共和国からマラウイ人帰国者
現在アフリカで最も感染者数の多い南アフリカ共和国から、多くのマラウイ人が帰国してきています。
マラウイが国境通過を規制してからも数百人のマラウイ人が南アフリカから帰国しており、どの対処が問題となっています。
帰国者は2週間の隔離措置が取られますが、政府による隔離に対して、隔離対象者から不満が出ており、隔離施設から何百人という隔離対象者が逃亡しているようです。
これとは別に、国内各地の隔離施設から隔離対象者が逃げ出していたり、コロナの陽性とされた医療従事者が院内隔離を拒否するということも起きており、隔離中の処遇が厳しい状況なのではないかと想像されますね。
それでは、民間レベルでのコロナウイルスへの意識はどのような状態なのでしょうか?
アフリカ、マラウイでのコロナウイルスへの意識 | 2020年4月~5月
残念ながら、2020年6月時点では正直まだ民間レベルでのコロナウイルス対策が浸透しているようには感じられません。
上記のように選挙演説があれば、マスクも無しに多くの人が一か所に集まっています。
ただ、経済的に対策を取りにくいという実情もあるとは思います。商売をやめる事はできないですし、石鹸やマスクを購入する家計状態にない人も多くいます。
極端な表現ではありますが、私のマラウイ人の友人はこのように言っていました。
「コロナで死ぬか、空腹で死ぬか」
貧困層にとってはコロナ対策だと言っても、「じゃあ、どうすればいいの?」といった状態だと思います。
ただ、本当に少しずつですが、手洗いやマスクの使用は拡がってはいると思います。
当初は海外のNGOや、その関係コミュニティグループのみがマスクを作成していましたが、今はローカルの服屋などがマスクを作成し始めていたり、子供向けの手洗いの啓発活動を行っていたりしています。
今、感染者数の急増を感じさせる増え方をしていますが、もし爆発的な急増が本当に起きたら、意識は大きく変わるのではないかと思います。
まとめ
アフリカのマラウイの現状はまだそれほど深刻なものではありませんが、ここ一週間で多くの感染者数が報告されています。
今のままのコロナウイルスへの対策意識だと一気に感染者数を増やす可能性があると感じています。特に選挙活動による影響は大きいのではないでしょうか。
南アフリカ共和国、エジプト、ナイジェリアでは10,000人を超える感染者数を出していますが、マラウイとの医療体制の差は歴然としています。
今後、貧困国の一つとされるマラウイがコロナウイルスの感染拡大にどう対応していくのか、私たちが何がやれるのかしっかり検討していかなければなりません。
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