アフリカ、マラウイにも多くのアルビノの方がいますが、多くの問題を抱えながら生活をしています。彼らの抱える問題とはどのようなものでしょうか?
マラウイのアルビノについて書いてみようと思います。
目次
◆アフリカ、マラウイにも多くいる「アルビノ」とは?
◆アフリカ、マラウイでのアルビノ問題
◆アフリカ、マラウイでのアルビノの人々の生活
◆アフリカ、マラウイでのアルビノ保護の動き
◆まとめ
私の現地マラウイで得た情報と個人的な経験ベースでお伝えしたいと思います。
アフリカ、マラウイにも多くいる「アルビノ」とは?
そもそも「アルビノ」とは何なのでしょうか?
アルビノ | Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%93%E3%83%8E
アルビノは日本語だと「先天性白皮症」という名前の遺伝性の疾患になります。体内で作られるメラニンが欠乏する事によって肌や体毛が白く、肌が紫外線に弱かったり、視覚に障害がある方も多くいます。
動物だと白いヘビや白い猫など、稀にテレビやインターネットなどで真っ白な動物を見る事があるかもしれませんね。それが人間に起こる現象です。
生まれながらに肌や髪が白かったり、身体が普通の人より弱い部分があったりするのですが、それだけでは社会的に大きな問題にはならないはずです。
しかしながら、アフリカではこの「アルビノ」の人達に長い間大きな問題が振りかかっています。
その問題とは何なのでしょうか?
アフリカ、マラウイでのアルビノ問題
アフリカではアルビノに対して迷信や誤った認識を持った人が多くいます。
マラウイでは以下のような事がアルビノに対して言われる事があります。ちなみに、私の経験の中ではこのような認識を持っているマラウイ人に遭った事はありません。
「アルビノは感染する」
「アルビノは神の与えた罰」
「アルビノの体の一部を持っていると金持ちになれる」
「アルビノの骨の中には金が含まれている」
「アルビノとセックスをするとHIV/AIDSが治る」
もちろん上記の事は全て誤った認識です。
「アルビノは感染する」「アルビノは神の与えた罰」
これらの理由によりアルビノが村やコミュニティから追い出されたり、差別や迫害を受けたりする事があるそうです。
↑に書いたようにアルビノは「遺伝性」ですので生また時から持っている疾患になりますので感染はしません。
また、遺伝によって起こる為、両親がアルビノの症状を発症していなくても、アルビノを発症する遺伝子を持っている場合は子供がアルビノになる事があります。その場合に、黒人同士の間に白い肌の子が生まれる事になるので、白人との不貞によってできた子だとして捨て子となる事もあります。
「アルビノの体の一部を持っていると金持ちになれる」「アルビノの骨の中には金が含まれている」
これらがアルビノを危機な状況に陥れている一番の理由で、そのため多くのアルビノが殺されたり誘拐されています。
アルビノ1人あたりMK6,000,000(約886,000円<2020年4月レート>)で売買されるという例も報告されており、この誤った信仰にそれだけの価値を感じている人がいるという事になります。
「アルビノとセックスをするとHIV/AIDSが治る」
マラウイではHIV/AIDSは大きな問題の一つです。もしHIVに感染したり、AIDSを発症した場合、藁にもすがる思いでこのような迷信を信じてしまう人が出てきても不思議ではないのかもしれません。
マラウイのHIVとAIDSについてはこちらの記事も読んでみてください。
ちなみに、アフリカの28カ国でこのような迷信によるアルビノ信仰が確認されており、アルビノの殺害件数はタンザニアで一番多く発生しています。アルビノの人数自体もタンザニアが一番多いそうです。
このような迷信にされされるの中、アルビノの人々はどのように生活を送っているのでしょうか?
アフリカ、マラウイでのアルビノの人々の生活
マラウイには約10,000人のアルビノがいると言われています。
アルビノはメラニンの欠乏により皮膚が紫外線に弱く、日差しの強いアフリカでは、アルビノが皮膚がんになる可能性が通常の人より1,000倍高くなると言われています。
皮膚が弱いので日焼け止めが日常的に必要になりますが、アフリカではもちろん日焼け止めの需要は高くありませんので簡単には手に入りません。都市部で、ある程度所得のある人なら日焼け止めを購入する事はできますが、農村部ではかなり難しいです。しかも、農村部で生活しているという事は、ほとんどが農業従事者という事になりますので、太陽の下で仕事をする事が多いはずです。
皮膚の弱さは人によって異なるそうですが、だいたい多くのアルビノの人達は長そでとツバのついた帽子を被っている印象です。人によってはサングラスもしていますね。
肌以外の身体疾患なども原因として挙げられますが、アフリカのアルビノの平均寿命は20~30歳とも言われ、通常よりも長生きするのが難しいとされています。
このように肌が弱い為に皮膚に腫瘍ができやすく、がんになる前に取り除くのがベストとされています。
しかしながら、アフリカでの皮膚がんや腫瘍摘出の手術は医療施設や医師の数が限られており、庶民にとって簡単に受けられるものではありません。
タンザニアのモシにある病院の例では、スペインの医師団が年に2回皮膚手術を行う為に来ているらしく、その医師に会うために地方から3日もかけてくる人もいるとの事でした。
ちなみにこの医師団は、2週間の滞在で診察をして手術する患者を選定し(全員が手術を受けられるわけではない)、100人近くの患者を処置するそうです。
手術には現地医師や医療従事者達も同席し、医療技術向上の機会にもなっているそうです
身体の疾患以外にも、アルビノの人達は精神的にも厳しい状態に追い込まれる事があるといいます。
迷信によって差別や迫害を受けたり、時には命を奪われる事もあります。その為、人間不信となり親戚や隣人を誰も信頼できなくなる人もいるそうです。また、夜襲われるのではないかと寝るのが怖く、不眠症のようになるケースもあるといいます。
地域によっては、このような周囲への不信感などもあり、アルビノコミュニティができやすく、その中でアルビノ同士の結婚が多くなり、遺伝的にアルビノの子供の出生率が高くなっている地域もあるそうです。
このような弱い立場にあるアルビノを守る動きはあるのでしょうか?
アフリカ、マラウイでのアルビノ保護の動き
マラウイでは2014年から「アルビノ狩り」が増加してきていました。
アルビノの体の一部を手に入れると「お金持ちになれる」「成功することができる」などという迷信から、裕福な人や政治家がアルビノ狩りを行う犯罪グループに依頼するケースもあるといいます。実際に2014年の総選挙期間には、アルビノの殺人事件や誘拐事件が多く発生したそうです。
アルビノの関わる事件では、裁判にならなかったり、警察による捜査が正しく行われなかったりするケースが発生していたのですが、このように政治家や有力者が関与している疑いがあったので、犯人が見逃されているのではないかともいわれています。
アムネスティ・インターナショナルの2019年の報告によると、2014年以降マラウイでは160件以上のアルビノに対する事件が起きており、そのうち22件が殺人事件でした。しかしながら、そのうちの30%程度しか適切に捜査が行われていないと言われています。
近年マラウイでのアルビノ事件への刑罰は重くなる傾向となっており、2019年にはアルビノ殺人犯3人に対して死刑判決が出されました。現地メディアでも、この判決はアルビノ保護の前進になっていると書かれていました。
政府はアルビノ犯罪に対する情報提供にMK5,000,000を与える事も発表しています。
教育現場では、アルビノの生徒の保護の為に、登下校のリスクの無い全寮制の学校に入学させる施策が取られています。
私が仕事で行く全寮制の学校にも、全校生徒500人近くの生徒の中にアルビノの生徒が5, 6人います。
まとめ
アフリカにいるアルビノは身体的な問題だけでなく、迷信による社会的な問題にも対処しなければならなく、時には自分の命を奪う者から逃げなければならない事もあります。
彼らは色々な面で脆弱な立場におり、社会が彼らを守らなければなりません。
医学的な進歩も、信仰や迷信のような文化の変容も、短期間に結果を出す事はできません。教育をベースに長い時間をかけて、みんなで少しずつ改善していけるものだと思います。
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